「これは一体…どういう事なんだ」 妻が笑っている。 知らない男の腕に抱かれ、笑っている。 嬉しそうに。蕩けた表情で。 言葉に表せないくらい、ショックだった。妻のそんな姿は、見たくなかった。 あるわけないと、確信していたのに。俺たちは上手く、いっていたじゃないか。 足元もおぼつかずフラフラと歩き続け… 鈍器で殴られたみたいな衝撃があって、目の前が真っ暗になった。 そうして…目が覚めるといつもの部屋だった。 「あなた。ほら、そろそろ起きて。朝ごはん出来てるわよ?」 妻も、何事も無かったかの様にいつも通りだった。 俺の愛した女性は、こんなにも酷い奴だったのか。 「ねぼすけゆうちゃん。早くおっきしましょうね〜」 そこで、俺はようやく違和感を覚えた。 俺たち夫婦しか知らない特別な起こし方。けど、彼女は 「恥ずかしいから、この起こし方は一年目だけって約束よ?」 懐かしさすら感じる新婚当時のちょっとおバカな遊び。 それは結婚生活が2年目に入った今、やらなくなって久しい。 何よりも目の前の妻が俺に向ける愛情が、演技とは思えなかった。 カレンダーを見て…俺はようやくその理由に気づく。 時間が……巻き戻っていたのだ。 そうして俺は、妻が変わり果てるその日までを、繰り返し見る事になった……。
三芳 千尋(みよし ちひろ)
駒乃間 詩(こまのま うた)
琴里 莉子(ことざと りこ)
三芳 結輝(みよし ゆうき)